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「月の氷」の使い方
約1年3ヶ月前に発表された「月面に氷」のニュースは、NASAの発表でも追認され、どのような形にせよ月の両極付近に「氷」が存在しているらしいことはほぼ確実のようです。そこで早速ですが、この氷の使い方についてあれこれ思いを巡らしてみるのもおもしろいかもしれません。
両極部分はおそらく日照の点では期待できそうもないので、太陽電池が使い物になるか疑問ですが、マイクロウェーブ送電で極地方に電力を送ることができれば、それで水を電気分解し水素と酸素を大量に供給することができるはずです。これは液化してロケット推進燃料に使えるでしょうし、酸素は呼吸用に、またほぼ1気圧下に置かれた水は飲料用、生活用、植物プラント用など月面基地を維持していく上で欠かせないものとなるでしょう。
問題は、氷が深いクレーター峡谷の底に埋まっているような状態ですと、たとえ存在することがわかっていても採掘作業が困難を極めるでしょう。期待通り「氷の湖」のような状態で存在していれば、クレーターに囲まれた満天の星空の下に幻想的・神秘的な風景が展開しているかもしれません。
宇宙服姿の隊員が採掘した氷のかたまりをソリに載せ、月面ビークルを使って前線基地へと搬送する光景を思い描きたくなってしまいます。あるいは人手に拠らず、極限環境作業用ロボットが黙々と氷を搬送しているかもしれません。吸引ノズルの先に氷を液化または真空条件下で気化する装置を組み込んだ井戸のような設備からパイプラインを介して処理プラント基地へと搬送されるかもしれません。
どのようなシステムが使われるにせよ、月面地下に設けられた基地内では蛇口をひねれば水やお湯が出てくるし、スチーム暖房やシャワーなども使える快適な室内環境が整えられるのではないでしょうか。この場合、閉鎖循環系の視点から月面環境をできる限り汚染しない配慮が優先されるはずです。
しかし、それだけの設備の建設と維持、人員の健康や安全を保持するために要するコストは膨大な額になるでしょうから、たとえ「生命の水」の存在がわかっていても、月面基地建設までには相当の年月を要するか、あるいは断念されることもあり得るでしょう。
「2001年宇宙の旅」を見た限りでは、さすがにあのアーサー・C・クラーク氏も月面基地の水の供給源として「大量の氷」の存在にまでは考え及ばなかったように思われるのですが、その意味では事実はSFを超え始めた、と言えるのではないでしょうか。地球の水もまた数十億単位の長い年月をかけて宇宙から絶えることなく降り注いだ氷によるものではないか、と考える学者もいるようで、「水」の存在はこの太陽系においては普遍的なものなのかもしれないと思いたくなります。
1998/03/08
月に憑かれて
「月に氷」のNASA発表は、新聞紙面やTVニュースの扱いから見る限り社会的なインパクトは最近の「荒れる中学生」の話よりも小さなものだったようですが、私にとってはむしろこのニュースの方が人類史という長いスパンで見たときにはよほど意義深いことのように思えるのです。無味乾燥の世界と思われていたあの!月に「氷」が、しかも希薄な分子や一時的な痕跡としてではなく、大量に現存する可能性までも!
望月(もちづき)は陰暦の十五夜(満月)を意味するのだそうですが、半世紀くらい後、月面に設けられた前線基地からようやく問題の地点に訪れた米ロ日共同調査隊が月面の凍土を掘り起こし「初めての氷」に触れるときの光景を想い浮かべると心高鳴るものがあります。
このミッションで日本人隊員が絶対やりそうなパフォーマンスは、その凍土状の氷を蒸留し精製して圧力釜に入れ、もち米を炊いて行う「餅つき」でしょう。ひょうきんな隊員たちがウサギのぬいぐるみを着て基地内で「月見だんご」を供える映像が月面から送られてくる日もそう遠い未来ではなさそうです。
そしてUFO肯定的見地からは、その前線基地上空に広がる無数の星々の中を音もなく飛び去る色鮮やかな謎の光跡を描くことを忘れるわけにはいきません。あるいは、その凍土の塊の中から地球由来の生物の痕跡、冷凍保存状態のサンマなどが出て来た日にはアダムスキーも真っ青。
遠い昔、地球に激突した小惑星による猛烈な衝撃で宇宙に跳ね飛ばされた大量の海水や湖水が、宇宙空間で魚もろとも瞬間冷凍、やがて月の引力に捕捉され月面に降り注いだ、なんていうファンタジーは一笑に付されるだろうか。
これは「月に氷」と「小惑星の激突」の二つの話を単に机上で結び合わせたに過ぎませんが、宇宙で繰り広げられる神秘的なドラマは人間の想像力を超えて、まさに「事実は小説よりも奇なり」と言えるかもしれません。
月の「地殻」というのも変ですが、「月殻」の状態によっては真空空間に飛散せずに高圧力で封じ込められたままの「液体としての水」が存在する可能性はどうでしょうか。それが時折、間欠泉のように高々と漆黒の空に噴き上がり、たちまち氷の結晶として雲母のように輝き散る光景も幻想的で絵になります。
月に滞在する調査隊員が将来どのような「月の神秘」を目撃することになるのか、いつまでも長生きして見届けたいし、なによりも人類がつつがなく宇宙への歩みを踏み出して行けるような世の中であってほしいと願わずにいられません。
1998/03/15
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